年金改正により今後の年金はどう変わるか
① 特例水準の年金を本来水準の年金に戻す
以前、物価が下がっても年金は下げないで支給してきました。(平成12年度~平成14年度)
この年金支給は現在も続いていて、これを「特例水準」の年金と言います。これとは別に平成12年度から16年度までの物価下落分を織り込んだ算出式を平成16年度に作りました。これを「本来水準」の年金と言います。特例水準は本来水準の支給額より2.5%多いので、この給付水準を解消するために、平成24年2月に国会に改正法案を提出しました。 平成24年10月より3年かけて特例水準を本来水準に戻すという内容でした。手始めとして平成24年10月より年金額を0.9%下げるはずでしたが、審議が進まず先送りとなりました。
② 専業主婦の未納保険料が後納できるようになった
サラリーマンの妻が3号被保険者から、夫が会社を退職したりして第1号被保険者となると、自分も第1号被保険者になりますが「種別変更」の手続きをしないと、その後の保険料は「未納期間」になってしまいます。このような人は、未納期間をまとめて納付し、年金に結びつけることができるようになりました。ただし、納付できるのは「10年前」までの未納保険料です。これを「後納制度」と言います。後納できる期間は、平成24年10月から27年9月までの3年間です。なお、65歳以上の老齢基礎年金受給者や繰上げ支給により老齢基礎年金を受給している人の後納はできません。
③ 年金受給に必要な加入年数25年を「10年」に短縮
年金を受給するためには25年の加入年数が必要です。この25年が「10年」に短縮されます。対象となる年金は老齢基礎年金、老齢厚生年金、退職共済年金、旧法による老齢年金、通算老齢年金、寡婦年金です。この受給期間短縮措置の施行日は平成27年10月1日です。これにより年金受給が可能になる人は約17万人います。
④ パートさんの厚生年金加入
現在は「週の労働時間が30時間以上」のパートは厚生年金加入となっていますが、平成28年10月1日より「週20時間以上」働くパートにも加入枠を広げることになりました。ただし、従業員500名以下の企業のパート(学生は除外)で、賃金月額87,999円以下、1年未満の勤務のパートはとりあえず除外されました。該当パートは約25万人います。
⑤ 父子年金の創設
夫が亡くなり、18歳未満の子供がいると、妻に遺族基礎年金が支給されます。ところが、妻が亡くなり父子家庭になっても遺族基礎年金は支給されませんでした。それが、父子家庭の夫にも遺族基礎年金が支給されるようになります。ただし、被扶養者 である第3号被保険者の妻が死亡したときは支給されません。施行日は平成26年4月1日です。
⑥ 障害年金の受給者が障害特例の請求をしたとき
現在は、報酬比例部分の年金は65歳前に受給できますが、定額部分の年金は65歳にならないと受給できません。しかし、障害者は定額部分の年金を早めて、報酬比例部分の年金と同時に受給できます。この年金は請求年金のため、手続きが遅れると定額 部分の年金受給は遅れて、報酬比例部分と同時に受給できません。それが報酬比例部分の支給開始年齢まで遡って受給できるようになりました。ただし、障害年金を受給している人に限られます。施行日は、これに関する法律の公布日から2年以内の政令で定める日からです。
⑦ 未支給年金を受給できる遺族の範囲を拡大
年金受給者が亡くなりますと、死亡月の年金は死亡後に支給されます。この本人受給分の年金を「未支給年金」と言い、受給できる遺族は生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。この遺族の範囲が拡大され、甥、姪など3親等の遺族も生計同一であれば、未支給年金を受給できるようになります。施行日は、これに関する法律の公布日から2年以内の政令で定める日からです。
⑧ 共済年金と厚生年金の一元化
公務員が加入する共済年金と、会社員が加入する厚生年金はいずれも「被用者年金」です。それにも関わらず、年金支給にあたっての支給要件や支給額に相違が見られます。この相違を無くし、共済年金の給付内容を厚生年金の給付内容に合わせる「被用者年金一元化法」が平成19年8月10日に成立しました。施行日は平成27年10月1日です。
(1)加入は70歳まで
(2)職域部分は廃止
(3)共済年金と厚生年金の在職老齢を同一水準に
(4)共済年金の障害年金にも保険料納付要件を適用
(5)遺族年金の転給廃止
(6)厚生年金と共済年金の保険料を同率に